
結論から解説 スコアボードのイニングはこう読む

野球のスコアボードを見て、「数字やチーム名が並んでいるけど、どう読めばいいの?」と戸惑った経験はありませんか?
スコアボードの基本的な見方は、「イニング」の意味さえ分かれば驚くほど簡単に理解できます。まず結論から、スコアボードの読み方を解説します。これだけで、野球観戦が何倍も楽しくなるはずです。
横の数字がイニング(回)、縦のチーム名と合わせて得点を見る
スコアボードの最も基本的な構造は、縦と横の軸で成り立っています。横に「1, 2, 3…」と並んでいる数字が「イニング(回)」、つまり試合の進行度を示しています。そして、縦に並んでいるのが対戦しているチーム名です。この2つが交差するマスに、そのイニングで各チームが獲得した得点が記録されていきます。
言葉だけでは分かりにくいので、下のシンプルな表を見てみましょう。
| チーム名 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | … | R |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 先攻チーム | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | … | 3 |
| 後攻チーム | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | … | 2 |
この表で言えば、「先攻チーム」は2回に1点、4回に2点を取ったことが一目でわかります。そして、右端にある「R」という欄が、その時点での合計得点(Run)を示しています。見方の基本さえ押さえれば、スコアボードの数字が意味のある情報に見えてくるはずです。
実際のプロ野球のスコアボードを例に解説
それでは、実際のプロ野球の試合で表示されるスコアボードを例に、さらに詳しく見ていきましょう。ここでは「読売ジャイアンツ」対「阪神タイガース」の試合を想定してみます。
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ジャイアンツ | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 8 | 0 |
| タイガース | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 10 | 1 |
このスコアボードから、以下の情報を読み取ることができます。
- 2回のジャイアンツの攻撃:スコアボードの「ジャイアンツ」の行と「2」の列が交差する部分を見ると「2」とあります。これは、2回の攻撃でジャイアンツが2点を獲得したことを意味します。
- 5回のタイガースの攻撃:同様に、「タイガース」の行と「5」の列を見ると「2」となっています。5回の攻撃でタイガースが2点を返したことがわかります。
- 試合の合計得点:右側にある「R」の欄を見ます。ジャイアンツが「4」点、タイガースが「5」点となり、この試合は5対4でタイガースが勝利したことが示されています。
ちなみに、「H」はヒット(安打)の数、「E」はエラー(失策)の数を表しています。まずは横の数字がイニング(回)、縦がチーム名、そして「R」が合計得点であること、この3点だけを覚えれば、スコアボードを読んで試合の状況を把握できます。
スコアボード理解の第一歩「イニング」とは何か

野球中継を見ていると必ず耳にする「イニング」という言葉。スコアボードにも「1, 2, 3…」と数字が並んでいますが、これがまさにイニングを表しています。まずは、このイニングが一体何なのか、基本的な意味から理解していきましょう。
イニングは試合の進行度を示す「回」のこと
イニングとは、野球の試合を区切るための単位で、日本語では「回(かい)」と呼ばれます。「1回、2回…」と数え、試合がどのくらい進んでいるのかを示す役割を持っています。
他のスポーツで例えるなら、サッカーの「前半・後半」や、バスケットボールの「クォーター」のようなものだとイメージすると分かりやすいでしょう。野球では、このイニングを基準に試合が進行していきます。日本のプロ野球の場合、基本的には9イニングで試合の勝敗を決めます。
1イニングは「表」と「裏」のワンセットで構成される
イニングを理解する上で最も重要なポイントが、1つのイニングが「表(おもて)」と「裏(うら)」という2つのパートで構成されていることです。
「1回の表」が終わったら、次に「1回の裏」へ進みます。そして、「1回の裏」が終わると、ようやく「1イニング」が完了し、次の「2回の表」へと移っていくのです。つまり、スコアボードの「1」という数字の中には、「表」と「裏」の2つの攻撃時間が含まれている、と覚えておきましょう。
この「表」と「裏」では、それぞれ攻撃するチームが入れ替わります。具体的にどちらのチームが攻撃するのかは、以下の表の通りです。
| イニングのパート | 攻撃するチーム | 守備をするチーム |
|---|---|---|
| 表(おもて) | 先攻チーム(ビジター) | 後攻チーム(ホーム) |
| 裏(うら) | 後攻チーム(ホーム) | 先攻チーム(ビジター) |
このように、1イニングの中で両チームが一度ずつ攻撃を行うのが野球の基本的なルールです。次の章では、この「表」と「裏」の詳しい意味や、なぜホームチームが後攻になるのかについて、さらに掘り下げて解説していきます。
イニングの「表」と「裏」それぞれの意味を初心者向けに解説

野球のスコアボードを見て「表」と「裏」という言葉に戸惑ったことはありませんか?イニングは「表(おもて)」と「裏(うら)」のワンセットで構成されています。 ここでは、それぞれの意味と役割を分かりやすく解説します。
先攻チームの攻撃が「表」
イニングの前半部分にあたるのが「表」で、先攻チームが攻撃する時間です。 スコアボードでは、上段に表示されているチーム(一般的にビジターチーム)が先攻となります。攻撃側のチームは、守備側のピッチャーが投げるボールをバットで打ち、得点を狙います。この攻撃は、守備側に3つのアウトを取られるまで続きます。
後攻チームの攻撃が「裏」
イニングの後半部分が「裏」で、後攻チームが攻撃する時間です。 先攻チームの攻撃がスリーアウトで終了すると、攻守を交代し、裏の攻撃に移ります。スコアボードでは下段に表示されているチーム(一般的にホームチーム)が後攻となりますです。 後攻チームも同様に、スリーアウトになるまで攻撃を続け、得点を目指します。
| 表(おもて) | 裏(うら) | |
|---|---|---|
| 順番 | イニングの前半 | イニングの後半 |
| 攻撃チーム | 先攻チーム(ビジター) | 後攻チーム(ホーム) |
| 英語表記 | Top of the inning | Bottom of the inning |
ホームチームが後攻になる理由
プロ野球では、本拠地で試合を行うホームチームが後攻になるのが一般的です。 これには、後攻が有利とされるいくつかの理由があります。最大の理由は、最終回(9回裏)の攻撃で1点でも勝ち越せば、その時点で試合が終了する「サヨナラ勝ち」が可能になる点です。 これは後攻チームだけに与えられた特権であり、劇的な勝利を演出する要素にもなっています。
また、常に相手チームが表で攻撃した後のため、その回の相手の得点を確認してから自分たちの攻撃プランを立てられるという戦略的なメリットもあります。例えば、「この回に何点取れば追いつけるのか」「何点取れば逆転できるのか」といった目標設定が明確になり、戦術を組み立てやすくなるのです。
アマチュア野球では、じゃんけんやくじ引きで先攻・後攻を決めることもありますが、プロ野球ではルール上、ホームチームが後攻と定められています。
イニングはどうやって進む?攻撃と守備の交代条件

野球の試合がどのように進んでいくのか、その鍵を握るのが「攻撃」と「守備」の交代です。イニングの「表」と「裏」は、この攻守交代によって成り立っています。ここでは、攻守が入れ替わるための絶対的なルールと、それによってイニングが進行していく流れを詳しく見ていきましょう。
アウトが3つで攻守交代
野球の試合で攻撃と守備が交代する条件は、たった1つだけで、攻撃側チームの選手が3人「アウト」になることです。これを「スリーアウトチェンジ」と呼び、野球の基本中の基本となるルールです。
「アウト」とは、攻撃側の選手(打者や走者)が、守備側のファインプレーなどによってプレーから退けられることを指します。アウトになるケースはさまざまですが、代表的なものには以下のようなものがあります。
- 三振(ストライクアウト):ピッチャーが投げたボールを、バッターが3回ストライクと判定されることでアウトになるケース。
- ゴロアウト:バッターが打った打球が地面を転がり(ゴロ)、守備側の選手がそれを捕球して、バッターより先に一塁へ送球した場合のアウト。
- フライアウト:バッターが打ち上げた打球(フライ)を、守備側の選手が地面に落ちる前に直接捕球した場合のアウト。
これらの方法でアウトが宣告され、その数が1つ、2つと増えていき、合計で3つのアウトになると、そのチームの攻撃は終了します。そして、今まで守っていたチームが攻撃へ、攻撃していたチームが守備へと入れ替わるのです。これを「チェンジ」または「攻守交代」と呼びます。
表から裏 裏から次のイニングへの流れ
スリーアウトチェンジのルールを理解すると、イニングがどのように進んでいくのかが明確になります。「表」から「裏」へ、そして次のイニングへと進む流れは、すべてこのスリーアウトによって区切られています。
具体的なイニングの進行は、以下の表のように整理できます。
| イニングの状況 | 攻撃チーム | 守備チーム | 交代・進行の条件 |
|---|---|---|---|
| 1回表 | 先攻チーム | 後攻チーム | 先攻チームが3アウトになると、「表」の攻撃が終了。 |
| 攻守交代 | 選手たちがベンチと守備位置を入れ替える | 「表」と「裏」の間のインターバル。 | |
| 1回裏 | 後攻チーム | 先攻チーム | 後攻チームが3アウトになると、「裏」の攻撃が終了。 |
| イニング終了 | 1回が完全に終了する | 次のイニングである「2回表」へ進む。 | |
| 2回表 | 先攻チーム | 後攻チーム | 再び先攻チームが3アウトになるまで攻撃が続く。 |
このように、野球の試合は「3アウトで攻守交代」というルールを繰り返すことで、9回まで進行していきます。スコアボードに「0」が並んでいるイニングは、両チームとも3アウトになるまで得点できなかった、ということを示しているのです。
野球の試合は全部で何イニング?

野球の試合が「イニング」という単位で進むことは理解できたところで、1試合は全部で何イニング行われるのでしょうか。
ここでは、試合終了までの基本的なイニング数から、プロとアマチュアの違い、そして延長戦やコールドゲームといった特別なルールまで詳しく解説します。
基本は9イニングで勝敗を決める
野球の試合は、公認野球規則で9イニング(9回)までと定められています。1回から始まり、9回の裏が終わった時点で得点の多いチームが勝利となります。スコアボードの右端に表示されている「9」という数字が、最終回です。
ただし、必ずしも9回裏まで行われるわけではありません。後攻のチーム(ホームチーム)が9回表の時点でリードしている場合、その時点で勝利が確定するため9回裏の攻撃は行われません。また、9回裏の攻撃中に後攻チームが勝ち越し点を挙げた場合も、その瞬間に試合終了となります。これを「サヨナラゲーム」と呼びます。
プロ野球とアマチュア野球のイニング数の違い
基本は9イニングですが、選手たちの年齢や体力、大会の規定などによって、野球のカテゴリごとにイニング数は異なります。主なカテゴリのイニング数を表にまとめました。
| カテゴリ | 基本イニング数 | 備考 |
|---|---|---|
| プロ野球 | 9回 | 同点の場合は延長戦あり(上限12回) |
| メジャーリーグ | 9回 | 同点の場合は勝敗が決まるまで延長戦(時間制限なし) |
| 高校野球※ | 9回 | 地方大会や全国大会で延長戦のルールが異なる |
| 中学野球(軟式) | 7回 | 延長戦やタイブレーク制度が採用されることが多い |
| 少年野球(学童野球) | 7回または6回 | 大会規定により時間制限が設けられることも多い |
このように、特にアマチュア野球では、選手の体を守るためや試合時間を考慮して、プロ野球よりも短いイニング数で試合が行われるのが一般的です。
※2025年の国民スポーツ大会(国スポ)で、高校野球の硬式・軟式ともに7イニング制が採用されました。この事例をもとに、今後の公式戦で導入していくかどうか、検証するようです。
9回で決着がつかない場合の延長戦とは
9回が終了した時点で両チームの得点が同じだった場合、勝敗を決めるために試合は「延長戦(延長回)」に突入します。延長戦は10回、11回、12回と続き、どちらかのチームが勝ち越すまで続行されます。
ただし、試合時間の長期化を防ぐため、ルールによって延長戦の上限が定められていることがほとんどです。例えば、日本のプロ野球では現在、延長は12回までと決められており、12回を終えても同点の場合は引き分けとなります。
また、高校野球の甲子園大会などでは、延長戦をスムーズに進めるための「タイブレーク制度」が導入されています。これは、延長回の攻撃をノーアウト一塁二塁など、あらかじめランナーがいる状態から始める特別ルールで、得点が入りやすく早期決着を促す目的があります。
点差が開いた場合のコールドゲーム
「コールドゲーム」とは、試合の途中であっても、規定の点差がついた場合にその時点で試合を終了させるルールです。主に選手の負担軽減や試合時間の短縮を目的として、高校野球や少年野球などのアマチュア野球で採用されています。
例えば、高校野球の地方大会などでは、「5回以降に10点差以上、または7回以降に7点差以上」の差がついた場合にコールドゲームが成立するといった規定が一般的です。プロ野球では、天候不良などを除き、点差によるコールドゲームは基本的にありません。最後まで逆転の可能性があるのが、プロ野球の醍醐味の一つとも言えるでしょう。
イニングに関するQ&A

ここでは、イニングにまつわる野球観戦初心者が抱きやすい疑問について、Q&A形式で分かりやすく解説します。
Q イニングの途中で選手交代はできますか?
はい、イニングの途中でも選手交代は可能です。野球では、監督が審判に交代を告げることで、いつでも選手を交代させることができます。 交代にはいくつかの種類があります。
- 代打(だいだ):攻撃中に、打順が回ってきた選手に代わって打席に立つ選手のことです。
- 代走(だいそう):塁に出ている走者に代わって出場する選手のことです。足の速い選手が起用されることが多くあります。
- 守備の交代:守っている選手(投手や野手)を交代させることです。投手交代は試合の流れを大きく左右するため、特に注目されます。
ただし、一度試合から退いた選手は、その試合に再び出場することはできません。 そのため、監督は試合の展開を読みながら、的確なタイミングで選手交代を行う必要があります。
Q 0点で終わったイニングはどうなりますか?
攻撃側が無得点で終わったイニングは、スコアボードに「0」と記録されます。
野球の試合では、毎回のように得点が入るわけではなく、0点で終わるイニングは非常に多くあります。特に投手力が高いチーム同士の対戦では、スコアボードに0が並ぶ「投手戦」と呼ばれる緊迫した展開になることも少なくありません。守備側のチームにとっては、相手の攻撃を0点に抑えることは「無失点」や「ゼロ封」と表現され、良いプレーの結果と言えます。
Q サヨナラゲームとイニングの関係は?
サヨナラゲームとは、後攻チームが最終回(9回裏)または延長回の裏の攻撃で勝ち越し点を挙げた瞬間に試合が終了することです。
通常のイニングは、表と裏の攻撃で3つずつアウトを取ることで進行します。しかし、サヨナラゲームが成立する場面では、後攻チームが勝ち越した時点で勝敗が決するため、3つのアウトを取らずにそのイニングの攻撃が終了します。
例えば、9回裏に同点の場面で後攻チームが満塁のチャンスを作り、そこでヒットやホームランを打って勝ち越し点がホームベースを踏んだ瞬間、試合は終わります。これが「サヨナラ勝ち」です。相手チームに「さようなら」を告げるという意味合いから、このように呼ばれています。
まとめ

本記事では、野球の基本単位である「イニング」について解説しました。イニングは試合の「回」を指し、先攻チームの攻撃である「表」と後攻チームの攻撃である「裏」で構成されます。3つのアウトで攻守が交代し、イニングが進んでいきます。
この仕組みを理解するだけで、スコアボードに表示される点数の流れが簡単に追えるようになります。プロ野球は基本的に9回まで行われますが、イニングのルールを知れば、野球観戦が何倍も面白くなるはずです。