
野球の基本「外野フライ」とは何かをわかりやすく解説

野球の試合を見ていると、解説者が「外野フライでワンアウトです」といった言葉を口にすることがよくあります。
野球観戦を始めたばかりの方や、ルールを改めて確認したい方にとって、「外野フライ」は最初に覚えておきたい基本的なプレーの1つです。本章では、外野フライがどのようなプレーなのか、定義からわかりやすく解説します。
外野フライの基本的な定義
外野フライとは、打者が打ったボールが、地面に一度も着くことなく(ノーバウンドで)、外野手に捕球されることです。 このプレーが成立すると、打者はアウトになります。
「フライ」は日本語で「飛球」と訳され、高く上がった打球を意味します。 その中でも、内野と外野を分けるベースラインよりも後方の、広大な守備範囲である「外野」で処理されたものが外野フライと呼ばれます。
外野フライになりやすい打球の種類
外野フライになる打球にはいくつかの特徴があります。典型的なのは、バットの角度がついて高く舞い上がった打球です。 滞空時間が長いため、外野手は落下地点を予測して捕球の準備をします。
また、バットの芯で捉えた鋭い当たりの打球でも、野手の正面に飛べば外野ライナーや外野フライとなり、アウトになることがあります。 このように、良い当たりが必ずしもヒットになるとは限らない点が、野球の奥深さの1つと言えるでしょう。
フライと他の打球との違い
打球には、フライの他に「ゴロ」や「ライナー」といった種類があります。 これらの違いを理解することで、試合の状況判断がより的確になります。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
| 打球の種類 | ボールの軌道 | 基本的な結果 |
|---|---|---|
| フライ | 高く、大きな放物線を描く軌道 | ノーバウンドで捕球されるとアウト |
| ゴロ | 地面を転がる、または低いバウンドをする軌道 | 野手が捕球し、一塁へ送球してアウトにするのが一般的 |
| ライナー | 低く、直線的な鋭い軌道 | ノーバウンドで捕球されるとアウト |
外野フライは、単に打者がアウトになるだけでなく、塁上のランナーの動きにも大きく関わる重要なプレーです。特にランナーがいる場面では、「タッチアップ」という次の塁を狙うプレーにつながることがあり、試合の流れを左右するポイントとなります。
外野フライと内野フライとの違いはどこ?見分け方を解説

野球観戦をしていると頻繁に耳にする「外野フライ」と「内野フライ」。どちらもバッターが打ち上げたボールをノーバウンドで捕球するプレーですが、その後の展開やルール上の扱いは大きく異なります。この違いを理解することが、野球の奥深さを知る第一歩です。
最も大きな違いは、打球が飛んだ場所と、それに伴うランナーの動きです。ここでは、誰でも簡単に見分けられるように、2つのフライの違いをポイントごとに解説します。
守備位置で判断する最も簡単な違い
外野フライと内野フライの最もシンプルで基本的な見分け方は、打球がどの守備エリアに上がったかで判断する方法です。言葉の通り、外野手が守っているエリアに飛べば「外野フライ」、内野手が守っているエリアなら「内野フライ」となります。
具体的には、以下の表のように守備範囲と主な捕球者で区別できます。
| フライの種類 | 主な守備範囲 | 捕球する主な野手 |
|---|---|---|
| 外野フライ | 内野の頭を越え、外野フェンスまでの間のエリア | 左翼手(レフト)・中堅手(センター)・右翼手(ライト) |
| 内野フライ | ピッチャーマウンド周辺から外野の芝生の手前までのエリア | 投手・捕手・一塁手・二塁手・三塁手・遊撃手 |
ただし、内野手が背走して外野のエリアで捕球したり、逆に外野手が前進して内野エリアで捕球したりすることもあります。あくまで一般的な目安として覚えておきましょう。
ランナーの動きに注目した違い
プレーの性質を大きく分けるのが、ランナーの動きの違いです。打球が上がった場所によって、ランナーが次の塁を狙うべきか、元の塁に留まるべきかの判断が全く異なります。
| フライの種類 | ランナーの基本的な動き | 狙い・目的 |
|---|---|---|
| 外野フライ | 捕球後、次の塁へ進塁を試みる(タッチアップ) | 1つでも先の塁に進むこと。得点に繋げること(犠牲フライ)。 |
| 内野フライ | 元の塁に戻る、または塁から大きく離れない(リタッチ) | ダブルプレー(併殺)を防ぎ、アウトカウントを増やさないこと。 |
外野フライの場合は、野手が捕球するまでの時間と送球距離が長いため、ランナーはタッチアップによる進塁を狙うのが一般的です。特に、三塁ランナーがいる場面での外野フライは、1点を争う重要なプレー(犠牲フライ)に直結します。
一方、内野フライの場合は、捕球から送球までの時間が短く、塁間の距離も近いため、ランナーが進塁を試みるのは非常に困難です。無理に進塁しようとすれば、ダブルプレー(併殺)になるリスクが極めて高くなります。
そのため、ランナーは捕球されてもアウトにならないよう、元の塁に戻る(リタッチする)のが鉄則です。さらに、特定の状況下では「インフィールドフライ」という特別ルールが適用され、ランナーを保護することもあります。
【外野フライ編】ランナーがいる時のタッチアップのルール

外野フライが上がった時、それは守備側にとってアウトを1つ取るチャンスですが、同時にランナーがいる攻撃側にとっては次の塁を狙う大きなチャンスにもなります。
この攻撃側の走塁プレーが「タッチアップ」です。ここでは、タッチアップの基本的なルールから、得点に直結する「犠牲フライ」までを詳しく解説します。
タッチアップの基本 ランナーがスタートを切れるタイミング
タッチアップとは、外野フライやライナーが野手に捕球された後、ランナーが一度帰塁(元の塁に戻ること)し、野手の捕球を確認してから次の塁へ進塁を試みるプレーのことです。 ランナーがスタートできるタイミングは、ルールで厳密に定められています。
ランナーがスタートを切ってよいのは、野手が飛球に触れた(捕球した)瞬間、またはそれ以降です。 そのため、フライが上がると、ランナーはまず元の塁に戻り、野手が捕球するのを確認してからスタートを切る必要があります。 捕球よりもわずかでも早く塁を離れてしまうと、後述する「リタッチの義務」を果たしていないことになり、アウトになる可能性があります。
リタッチの義務 捕球前に離塁してしまった場合
野球のルールでは、フライが野手に捕球された場合、各ランナーは一度、投球当時にいた塁に戻って触れ直さなければならないと定められています。 これを「リタッチの義務」と呼びます。
もし、野手が捕球する前にランナーが塁を離れて(フライングして)次の塁へ進んでしまった場合、守備側からのアピールがあればアウトになります。
これを「アピールアウト」といい、守備側の選手がボールを持って、ランナーが離れた塁に触れるか、ランナー自身に触球(タッグ)して審判にアピールすることで成立します。守備側のアピールがなければ、ルール違反は見過ごされ、進塁が認められてしまうため、守備側は常にランナーの動きを注視する必要があります。
「犠牲フライ」とは得点につながるプレー
犠牲フライは、タッチアップの中でも特に得点に結びつく重要なプレーで、「犠飛(ぎひ)」とも呼ばれます。
具体的には、ノーアウトまたはワンアウトの状況で、外野へのフライやライナーによって三塁ランナーがタッチアップし、ホームインして得点した場合に記録されます。このプレーが「犠牲」と呼ばれるのは、打者自身はアウトになるものの、その打球によってチームに得点をもたらす自己犠牲的なプレーだからです。
犠牲フライの大きな特徴は、打者に打点が記録される一方で、打数はカウントされないことです。 これにより、打者はチームに貢献しながらも、自身の打率を下げずに済みます。犠牲フライが成立するための主な条件は以下の通りです。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| アウトカウント | ノーアウト、またはワンアウトであること |
| 打球 | 外野へのフライ、またはライナーであること(ファウルフライも含む) |
| ランナーの動き | 野手の捕球後、ランナーがタッチアップしてホームインし、得点すること |
| 記録 | 打者に打点1が記録され、打数は加算されない |
なお、打球を外野手が捕球できずにエラーした場合でも、記録員が「もし捕球していてもランナーは得点できていた」と判断すれば、犠牲フライが記録されることがあります。
【内野フライ編】特別ルール「インフィールドフライ」を理解する

内野フライが上がった際に、時折「インフィールドフライ」という特別なルールが適用されることがあります。これは、外野フライにはない内野フライ特有のルールで、試合の公平性を保つために設けられています。
一見すると複雑に感じるかもしれません。しかし、ルールができた背景を知ることで、なぜこのようなプレーが定められているのかを深く理解できます。
インフィールドフライが適用される状況
インフィールドフライは、審判員が宣告することによって初めて成立するルールです。 宣告されると、野手がそのフライを捕球したかどうかに関わらず、打者はアウトになります。 このルールは、特定の条件がすべて満たされた場合にのみ適用されます。
具体的な適用条件は、以下の表の通りです。
| 項目 | 適用条件 |
|---|---|
| アウトカウント | ノーアウト または 1アウト |
| ランナーの状況 | 一塁・二塁 または 満塁 |
| 打球の種類 | 内野手が普通の守備で捕球できると審判が判断したフェアゾーンへのフライ (ライナーやバントによるフライは除く) |
これらの条件が揃うと、審判は打球が最高点に達するあたりで人差し指を天に指し、「インフィールドフライ、バッターアウト」と宣告します。 この宣告がなされた時点で打者はアウトとなりますが、ボールインプレー(プレーが継続中)の状態であるため、ランナーは注意が必要です。
もし野手がフライを捕球した場合、ランナーは通常のフライと同様にリタッチ(元の塁に戻る)の義務が生じ、タッチアップも可能です。
一方で、野手が落球した場合は、打者はすでにアウトになっているためランナーに元の塁に戻る義務(リタッチ)や進塁する義務(フォースの状態)はなくなり、状況を判断して次の塁へ進むこともできます。 ただし、塁を離れている際に野手にタッチされればアウトになります。
併殺を防ぐためのルール的な背景
インフィールドフライというルールは、守備側が意図的にフライを落として、不当に併殺(ダブルプレー)や三重殺を狙う「ずるいプレー」を防ぐために作られました。
もしこのルールがなかった場合、次のようなプレーが起こり得ます。
- ノーアウト満塁の場面で、打者が平凡な内野フライを打ち上げる
- フライが上がったため、各ランナーは元の塁に戻ろうとする(リタッチの準備)
- しかし、内野手は捕球せずに、わざとボールを地面に落とす(故意落球)
- ボールが地面に着いた瞬間、全てのランナーには次の塁へ進む義務(フォースの状態)が発生
- 内野手はボールを拾い、「ホームへ送球(三塁ランナーアウト)→三塁へ送球(二塁ランナーアウト)→二塁へ送球(一塁ランナーアウト)」のように、いとも簡単にトリプルプレーを完成させることができる
このようなプレーは、攻撃側にとってあまりにも不利です。 そこで、あらかじめ審判がインフィールドフライを宣告し、打者をアウトにすることでランナーの進塁義務をなくし、守備側が意図的に併殺を狙うことを防いでいるのです。 これは、野球というスポーツの公平性を保つための重要なルールと言えます。
外野フライか内野フライか判断が難しいプレー

野球の試合では、打球が外野と内野の境界線付近に上がることがあります。このような打球は、外野フライなのか、それとも内野手が処理すべき打球なのか、一瞬の判断が難しいケースです。
野手の守備位置やコミュニケーション、そして打球の性質によって、単純なアウトがヒットになったり、その逆が起きたりと、プレーの結果が大きく変わることがあります。ここでは、そうした判断が難しいプレーの代表例である「ポテンヒット」と、意外と知られていない「ファウルフライ」でのタッチアップルールについて詳しく解説します。
ポテンヒットとの違い
ポテンヒットとは、内野手と外野手の間にふらふらと上がった打球が、どちらの野手も捕球できずにグラウンドに落ちてヒットになるプレーのことです。
語源は、ボールが「ポテン」と落ちる様子から来ていると言われています。 狙って打つことは難しく、多くはバットの芯を外れた当たり損ねの打球が結果的にヒットになるケースです。
外野フライが「野手によって正規に捕球された」打球であるのに対し、ポテンヒットは「捕球されずにフェアゾーンに落ちた」結果、安打(ヒット)になるという点で根本的に異なります。プロ野球でも、野手同士がお互いに捕ってくれるだろうと譲り合ってしまう「お見合い」によってポテンヒットが生まれることがあります。
両者の違いをまとめると、以下のようになります。
| 項目 | 外野フライ | ポテンヒット |
|---|---|---|
| 捕球の有無 | 捕球される | 捕球されない |
| 打者の記録 | アウト(飛球) | 安打(ヒット) |
| 発生エリア | 主に外野手の守備範囲 | 主に内野と外野の中間 |
ファウルフライとタッチアップの可否
ファウルゾーンに上がったフライを野手が直接捕球した場合、打者はアウトになります。これを「ファウルフライ」と呼びます。では、このファウルフライでランナーはタッチアップできるのでしょうか。
| 打球の種類 | 打者の結果(捕球時) | タッチアップの可否 |
|---|---|---|
| フェアゾーンのフライ | アウト | 可能 |
| ファウルゾーンのフライ(ファウルフライ) | アウト | 可能 |
結論から言うと、ファウルフライが正規に捕球された場合でも、ランナーはタッチアップができます。 これは、フェアゾーンのフライと同様に、野手が打球を正規に捕球した時点でボールインプレイの状態が続くためです。そのため、ランナーはリタッチ(元の塁に触れ直すこと)さえすれば、次の塁へ進塁を試みることがルール上認められています。
例えば、ノーアウトまたはワンアウトで三塁にランナーがいる場面で、三塁側のファウルゾーンにフライが上がったとします。三塁手がこれを捕球した場合、三塁ランナーは三塁ベースに戻ってタッチし、捕球を確認してからホームへスタートを切ることが可能です。
同様に、一塁側のファウルフライで二塁ランナーが三塁を狙うケースや、バックネット際のキャッチャーフライで一塁ランナーが二塁へ進塁を試みることもあります。
ただし、実際にファウルフライでタッチアップを成功させるのは、野手が捕球後に体勢を崩しているなど、よほど条件が揃わない限り難しいプレーと言えるでしょう。
まとめ

外野フライと内野フライの最も簡単な違いは、打球を捕球する野手の守備位置です。しかし、ランナーがいる状況では、その違いが試合展開を大きく左右します。外野フライでは、捕球を前提とした「タッチアップ」が可能となり、得点につながる「犠牲フライ」が生まれます。
一方、内野フライでは、特定の条件下で攻撃側を不利な併殺から守るための特別ルール「インフィールドフライ」が適用されることがあります。これらのルールの違いを理解することで、野球の戦略的な奥深さがわかり、観戦がさらに楽しくなるでしょう。